配信Single「南十字星」インタビュー

――私、2番の歌詞が好きなんですよ。
サビが毎回〈だから、ねえ〉から始まるけど、2番はAメロが〈欲張りかな、でも〉で終わるから、
サビに入る時に〈でも/だから、ねえ〉と3つ段階を踏む構成になっていて。
逆接の〈でも〉と順接の〈だから〉を並べるのは文法的には正しくないけど、
歌詞というフォーマットだとそれがOKになり得る感じが面白い。
ここを修正しなかったのは意図的ですよね?

 

ちとせみな(Vo&Gt):意図的ですね。
その前に〈欲張りかな、でも本当〉とあるように、一生揺れているんですよ。
天秤にかけて、「欲張りかもしれへんけど、
これも本当の気持ちやで」っていうのを一生続けていて。
その揺れを表現するために〈欲張りかな、でも〉と決着をつけずに途中で切って、
そのままサビに行くという感覚です。

 

――なるほど。そもそも「南十字星」はいつ頃生まれた曲なんですか?

 

ちとせ:曲自体が生まれたのは2016年で、2016年の年末のライブで初めて披露した覚えがあります。

 

いしはらめい(Ba&Cho):前のドラマーと3人で作ったんですけど、
私、この曲に関してだけはどうやってできたのかを覚えていなくて。
だけど、みんなすごく興奮していたことは覚えています。

 

ちとせ:誰にも求められていなくても、3人だけでただ曲を作って、喜んで。

 

いしはら:できあがった時に「すごくいい曲ができた!」と思ったからこそ、
「ライブですぐやろう!」という話になったんだと思います。

 

ちとせ:2016年は私が学業で忙しかったので、バンドの活動が止まっていた時期でした。
そんななか、年末にようやくライブをできることになって、そこで「南十字星」を演奏して。
当時はお客さんも全然いなかったんですけど、
今年できた、私たちの今の曲を一度は世に出しておきたいという気持ちでライブをやっていました。

 

――2018年に加入したもりもとさんが「南十字星」を聴いたのはその数年後?

 

もりもとさな(Dr&Cho):入りたての頃に聴きました。
前のドラマーさんが叩いていた仮音源があるんですけど、
この曲の仮音源と「もしも」(1stミニアルバム『かけがえなくなりたい』収録曲)の仮音源を
同じタイミングに聴いて。両方ともパンチが強い曲だったし、入りたてで何も分からへん時期だったので、
自分が叩いている姿が想像できなくて……怯えてました。

 

――プレッシャーを感じたんですかね。

 

もりもと:そうですね。2つともすごくいい曲だったからこそ、その曲を叩いている自分を想像できなくて。
そこからは前のドラマーさんの動画を見ながら「こういうふうに叩いたらいいかな?」と、
ちょっとずつ擦り合わせていったんですけど。

 

――今はどうですか? 怯えはなくなりました?

 

もりもと:叩いているのがすごく楽しいです。一つひとつのフレーズも、展開もすごく面白くて。
一人で練習している時に、他にもしなきゃいけない曲があるんですけど、
合間に「南十字星」のフレーズを叩いたりしてます(笑)。

 

――それはよかったです。曲ができた時点で手応えを感じていたのに、
ここまであえてリリースしてこなかったのも不思議だなと思ったのですが。

 

ちとせ:自分たちにとっては「めっちゃいい曲だ!」と思ってゆっくり温めてきたという印象で。
いい曲というのは、売れる/売れないというよりかは、すごく気持ちが入った曲という意味なんですけど、
だから大事にとっておこうという気持ちでした。

 

――だけど今リリースしようと思えたのなぜでしょう?

 

ちとせ:聴いてくれる人が多ければ多いほど嬉しいから、
「バンドが大きくなってから出したい」とずっと思っていて。
一昨年全国流通をさせてもらって、聴いてくれる人が増えている実感があったので、今回出すことにしました。
あと、もう一つの理由は……「南十字星」の歌詞は、未来に不安があるけど、
前を向いて夢を追いかけているという内容なんですよ。
その感覚が今の私たちにぴったりだなあと思ったんですよね。

 

――というと?

 

ちとせ:今の自分たちは、ガムシャラにやっているなあと思っていて。
今は3人だけで活動ができているわけではなくて、すごくたくさんの人に支えられながら活動していて。
だからこそ「成長しなきゃ」という気持ちがめちゃくちゃあるんですよ。

 

――ファンやスタッフなど周りにたくさん人がいるからこそ、
「3人でしっかりバンドを確立させなければ」という気持ちが強いと。

 

ちとせ:そうですね。誰にも待たれていなかったあの頃とは環境も全く違うんですけど、
ガムシャラで、より突っ走りたいという気持ちがあるのは一緒で。
それが「南十字星」の歌詞にあるような「夢に向かって突き進みたい」というところと重なるんだと思います。
昔とは夢の追いかけ方が違うけど、変わらず夢を追いかけているという感覚です。

 

――その辺りを踏まえて、ちとせさん、いしはらさんにとって「南十字星」はどんな存在なのか、
改めて語っていただけますか?

 

いしはら:「南十字星」という曲があることで心に勇気が湧いてくるというか。
「あの曲があるから大丈夫」という気持ちを持ってずっと温め続けてきた曲なので、
何回聴いてもやっぱり今までのことを思い出してしまいますね。
でも、今新しくリリースして、今の3人でライブでやったら……もちろん昔のことも思い出すけど、
今の気持ちをちゃんと乗せて演奏できるんじゃないかと思います。
だから“昔の曲”という感覚はないんですよね。これから3人でこの曲をやっていって、
聴いてくれる人もたくさん増えていくと思うので、
また新しい感情が生まれるんじゃないかなという気持ちはあります。

 

ちとせ:確かに“昔の曲”という感覚は全くないですね。
私にとって「南十字星」はスーパーネガティブポジティブ曲なんですよ。
ネガティブで最悪な時代に作った前向きな曲。
あの頃は、好きだった人と上手く関われなくて、学業がめちゃくちゃ忙しくて、もちろんバンドもできなくて……。
心の救いが何もないような生活の中で、唯一私を救ってくれたのが、自分の感情を吐き出して、
曲という形にすることでした。

 

――自分を救うために曲を書いていたと。

 

ちとせ:曲を作ると、負の感情も正しくなるというか、あってもいいと思えるので、それに救われていて。
「南十字星」には心の弱さもめちゃくちゃ書いているけど、ポジティブではあるので、
それに支えられて「この曲があるから頑張ろう」という気持ちになれていましたね。

 

――そうだったんですね。今回のリリースにあたって、
ASPARAGUSの渡邊忍さんにアレンジで参加してもらったんですよね。

 

ちとせ:すごく気持ちの入った曲なので、サウンド面でもめちゃくちゃ輝かせたいなあと思って。
渡邊さんにはそれを助けてもらいました。
アレンジャーとして外部の方に入ってもらうのは今回が初めてなんですよ。
初めてのことをやるということは私たちの何かを変えるということで、
バンドとして一皮剝けることだと思うんですけど、そ
れをやるには大切な曲じゃなきゃアカンよなあと思っていて。
そう考えると、「南十字星」だからこそ新しいことをやってみようという気持ちになれたんだと思います。

 

――渡邊さんからもらったアドバイスで印象に残っていることはありますか?

 

ちとせ:ボーカルを録っている時に時間が結構押していたんですよ。
それで私が周りの人に遠慮するような声掛けをしたら、
「気にせず向き合っていいよ」「そんな生き方してたらもったいないよ」と言ってくださって。

 

いしはら:ちとせと同じように、「そんな生き方してたらもったいないよ」というのは、
私もさなちゃんも言われました。

 

もりもと:そうですね。

 

いしはら:私たち、レコーディングの到達点を自分で勝手に決めてしまう癖があったみたいで、
「これがいいです」じゃなくて「これで大丈夫です」みたいな言い方をしてしまっていたんです。
だから渡邊さんに「“大丈夫です”って何?」と言われてすごくハッとしたというか。
「本当にいいと思ったテイクをちゃんと録るためのレコーディングなのに……」と反省したし、
アレンジしてくださっている方にそんなことを言わせてしまってはダメだなあと申し訳ない気持ちにもなったし。
すごく為になりました。

 

――バンドにとって大切な曲だからこそ「妥協しちゃいけないよ」と言ってもらえてよかったですね。

 

ちとせ:そうですね。渡邊さんもすごく真剣に向き合ってくださっていることが伝わって嬉しかったです。

 

――「南十字星」はいよいよ6月30日に配信リリースされます。
そういえば、今年に入ってから配信でのリリースが続いていますね。

 

ちとせ:そうですね。4月に「春」をリリースした時と同じように、
Twitterで感想を呟いてくれた人にメンバーからリプライをする企画をやる予定で。

 

いしはら:「春」の時にリスナーの方からのコメントを見てかなり嬉しかったんです。
それもあって、エゴサとかを結構するようになっちゃったんですけど(笑)。

 

ちとせ:(笑)。聴いてくれていることが目に見えて分かるから、確かに嬉しいよね。
去年、元々CDだけに入っていたいくつかの曲を『MY FAVORITES』というアルバムとして
配信リリースしたんですけど、その曲をライブでやると反応がよくて。
MVを作っていない曲でも聴いてくれている人が結構いるのは、
ストリーミングのおかげなのかなと思っていたりしました。

 

――みなさんがずっと大切にしていた曲が、これからたくさんの人に聴かれるようになるわけですが、
その点について何か思うことはありますか?

 

もりもと:私はまだ想像がつかなくて。
「ライブで演奏できる曲がまた1曲増えたなあ」という感覚なんですけど、
3人とも自分らのバンドの曲が好きなので、曲の数が増えるほど、
ライブでできない曲も増えてしまう寂しさも正直あります。

 

ちとせ、いしはら:あはははは。

 

もりもと:でも「南十字星」という曲がこれから(ライブで)できるようになるのは、
めちゃくちゃ楽しみだし嬉しいです。
今の時点でもカッコいい曲なんですけど、
ステージでの「南十字星」をこれから3人で作り上げていきたいなと思います。

 

いしはら:今までの自分たちの全部が詰まった曲を、
このタイミングでちゃんと形にできたのはすごくありがたいことで。
私はこの曲を聴いたらいろいろな感情になるので、同じように、
リスナーの方にもホンマに自由に聴いてほしいなと思います。
リスナーの方に聴いてもらうのももちろん楽しみですけど、
個人的に10年、20年経ってもずっと聴いていきたい曲やなと思うので、
その時に聴きながらどんなことを思うのか、すごく楽しみなんですよね。
歌詞もいろいろなことに置き換えられると思うし、状況によって感じ方が変わると思うので。

 

ちとせ:私は「正直に書こう」と思いながら歌詞を書いているので、
どん底の時に作った曲はそのまま暗い曲になりがちなんですよ。
だけど「南十字星」はちゃんと光が射していて、あの頃の私を救ってくれた曲でもあって。
それが他の人に聴かれるというのは、めちゃくちゃ感慨深いというか。
ホンマに親のような気持ちです。……親になったことはないんですけど(笑)。

 

いしはら、もりもと:(笑)

 

ちとせ:もしも「これは自分の曲や」ぐらいの気持ちで受け取ってくれる人がいたとしたら…
その人にとっての光のような、温かい存在になれたらめっちゃ嬉しいですね。
ヒーローみたいな曲ではないですけど、私たちをずっと支えてくれていた曲なので。
そんなふうに誰かに届いたらすっごく嬉しいなと思います。

 
interview:蜂須賀ちなみ
 



配信Single

『南十字星』

2021/06/30 0:00-
各主要音楽配信サイトにて
6/30(水)0:00~随時配信開始
https://DTO30.lnk.to/minamijujisei
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